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お医者さんからのメッセージ
Vol.4 ふじおか小児科 院長 藤岡雅司先生

Vol.4 ふじおか小児科 院長 藤岡雅司先生

IMD(侵襲性髄膜炎菌感染症)はワクチンで予防が可能
〜思春期に接種することの大きな意義〜

髄膜炎菌ワクチンが、2015年5月から日本でも使えるようになり、IMDはワクチンで防げる病気:VPD(Vaccine Preventable Diseases)となりました。
ワクチンによる予防医療を熱心に推進しておられる小児科開業医の藤岡雅司先生に、髄膜炎菌ワクチンの有用な使用法について伺いました。

藤岡雅司先生

藤岡 雅司
(ふじおか・まさし)

大阪府富田林市・ふじおか小児科 院長。大阪市立大学大学院医学研究科(小児科学専攻)修了後、宝生会PL病院小児科勤務を経て、1996年にふじおか小児科を開院、現在に至る。日本外来小児科学会副会長、日本小児科医会代議員、日本小児科学会代議員等を務める。

10代前半での接種が望ましい

髄膜炎菌ワクチンの予防接種を思春期に行うことの意義について教えてください。

IMDの好発年齢は、5歳未満の乳幼児期と11〜19歳の思春期です。IMDの流行が日本より多い米国では、11〜12歳での初回接種、16歳での追加接種が推奨されています。この年代になりますと家庭外での活動が活発になり、スポーツ合宿や寮生活などから感染の機会が増えてきます。IMDは非常に急激かつ激烈に進行する例もありますので、ワクチンを接種しておくことは非常に重要です。予防は治療に勝るという観点から日本でも、10代前半での初回接種と、その5年後くらいでの追加接種が望ましいと思います。

髄膜炎菌ワクチンを、DT(ジフテリア・破傷風)ワクチンやインフルエンザワクチンと同時接種することの可能性はいかがでしょうか。

同時接種することはもちろん可能です。しかしその前にワクチン接種の意義についての十分な情報提供が必要です。DTワクチンやインフルエンザワクチンの接種時が、髄膜炎菌ワクチンを保護者に啓発する大変よい機会になると思います。IMDが危険な病気であること、ワクチンで予防できることを、小児科医がわかりやすく説明すべきです。

IMD感染のハイリスクとなりやすいのはどのような人たちですか。

スポーツ活動で全寮制の中学校や高校で生活する子どもたちや、海外留学で寮に入る子などはリスクが高くなりますので、事前にワクチンを接種しておいたほうがよいと思います。2015年の夏に日本で世界スカウトジャンボリー(ボーイスカウトの世界大会)があったのですが、スコットランド人4名、スウェーデン人4名(疑い例含む)が帰国途中または帰国後にIMDを発症したそうです。幸い重症化せずにすみ、日本での二次感染もないようでした。子どもたちが集団で濃密な生活を行うと感染する機会はどうしても高まりますね。

現在のところIMDの流行は少ないが・・・

思春期で接種するワクチンに優先順位はありますか。

基本的には年齢に関係なく、ワクチンに優先順位をつけることはできません。未接種のワクチンがあればすべて受ける必要があるからです。麻疹、風疹、水痘、おたふくかぜは言うまでもなく、日本脳炎やジフテリア、破傷風。できれば百日咳やポリオも含む四種混合がベストです。それからB型肝炎。さらに女子では子宮頸がん予防のHPVワクチンも。今後はIMDを予防する髄膜炎菌ワクチンもその中に入ってきます。
専門家である医師や看護師、保健師が、病気の予防に関してワクチンの必要性をもっときちんと説明をしないといけません。私たちが正しい情報を提供すれば、保護者は正しい選択をしてくださると思っています。

IMDに対する小児科の先生方の関心度はいかがでしょうか。

当然のこととしてIMDについても小児科医が十分に知っていなくてはいけないのですが、日本では日常的によく経験する病気ではないのでなかなか情報が入ってきません。かつて日本でもIMD(当時は髄膜炎菌性髄膜炎)の患者さんは多かったのですが、幸い現在は落ち着いています。しかし欧米では増えているようですし、再興感染症となる可能性もありますので油断はできません。私は学生時代の小児科講義での最初の症例がIMDでした。私自身は一例も経験していませんが、私より少し上の年代の小児科医は、それなりに経験されているようです。講演会等で、海外でIMDの臨床経験が豊富な医師の話を聞くことが大事ではないかと思っています。
細菌性髄膜炎を予防するヒブワクチン、肺炎球菌ワクチンの認可は海外と比べて10年も20年も遅れてしまったのですが、導入されたおかげで乳児のヒブによる髄膜炎はほぼゼロになり、肺炎球菌の髄膜炎も激減しました。私も含め日本の小児科医はワクチンの効果を強く実感しているのではないでしょうか。
髄膜炎菌ワクチンも承認されてハード面が整ったわけです。これから小児科医を含めた医療関係者が、髄膜炎菌ワクチンの必要性についてどれだけ啓発できるか、ソフト面というか、小児科医一人ひとりの対応がより重要になってくると思います。

VPDを知って子どもを守ろう

藤岡先生が熱心にワクチン接種を推進される、その思いとは?

当然のことですが、「一度失ったものは元には戻らない」ということです。麻疹でも風疹でも、水痘やおたふくかぜでも、重症になって亡くなった子どもや重い後遺症が残った子どもなど、小児科医ならいろいろと辛い経験をしていると思います。でもこのような患者さんも、ワクチンを接種していれば状況は大きく違ったはずです。ワクチンさえきちんと受けていたら・・・。自分が診たお子さんで同じことを繰り返したくないという思いから、私はワクチンの啓発に積極的なわけです。
私は『VPDを知って、子どもを守ろうの会』というNPO法人の副理事長をしています。ワクチンで予防できる病気は予防するというVPDの考え方を、子どもたちに関わる大人に対してもっと広げたいと思っています。医療関係者だけでなく保護者や、保育や教育の人たちにも情報提供をする会として活動しています。2008年にこの会ができるまで、「VPD」は専門的な用語だったのですが、その名前を会の名称にすることでだいぶ普及してきたように思います。

自己負担である任意接種ワクチンを患者さんへ勧めるコツはありますか。

特にコツというものはありません。しいて言えば、繰り返し勧めるということくらいです。たとえば、火災保険や地震保険にしても何も起こらないかもしれないけれどもリスクを感じるから保険金を払うわけです。病気になるとかけがえのない我が子が死亡したり重い後遺症を残してしまう危険があります。保護者の方々がそのような状況を実感できれば、任意接種ワクチンの費用を高いと感じることはないと思います。また当院では任意接種は受診者へのサービスと位置づけ、できるだけ接種費用を安く設定しています。
正しい判断ができるよう保護者の方々に正確な情報を伝えることが小児科医をはじめとする医療関係者の責務だと思います。もし小児科でワクチンの啓発が十分にされていないのであれば残念なことですね。私は受診時には繰り返し、繰り返しワクチンの意義を説明しています。当院では思春期の子どもたちでも受診時には母子健康手帳を持参してもらい、ワクチンの接種もれがないか確認し勧奨しています。かかりつけの小児科医がここまで言うのだから受けておこうと思っていただけるよう、普段の診療から信頼関係を築いておくことが肝心ですね。

最終更新日:2015年10月9日

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